2026年、大手生命保険会社の不祥事が相次いで報道されました。
プルデンシャル生命では、営業社員による金銭詐取などが発覚。
被害申告のあった顧客は累計で約1,200人、被害総額は段階的な調査拡大の末に約39億円にまで膨らみました。
ソニー生命でも2026年4月、顧客31人から金銭トラブルの申し出があり、5月には元営業社員4人が顧客14人から投資話や借金名目で総額約1.2億円を取得していたことが判明。
別の営業社員2人は、顧客に保険を解約・減額させて計150万円をだまし取っていたことも発覚しています。
ニュースはこれを「不適切な金銭取得」「不適切な会計」と報じますが、正直どこからどう見ても犯罪です。
この見方は両学長がライブ配信で語っていた内容とも重なります。
先に結論を言います。
保険営業マンの「売る技術」そのものは、本物のプロフェッショナルスキルです。
でも、本当に良い商品はそんな技術を使わなくても売れます。
今日はなぜこんな不正が起きたのかという構造的な話と、実際にトップ営業マンがどんな技術を使って顧客と向き合っているのかを紹介した上で、その技術がなぜ「貯蓄型保険」に使われているのかを考えます。
なぜ不正が起きるのか?構造の話
プルデンシャル生命もソニー生命も、いわゆる「一社専属」の生命保険会社です。
社員は特定の1社の保険だけを扱い、契約を取れば取るほど高額な歩合給が入る仕組みになっています。
この仕組み自体は悪ではありません。
ただし、次の2つが重なると、顧客との境界線が崩れやすくなります。
- 成果が青天井の歩合給:契約件数・継続率がそのまま年収に直結する
- 顧客との関係が極めて密接:家族構成、資産状況、将来の不安まで深く聞き出す営業スタイルが「良い営業」とされる
顧客の家計や将来設計まで踏み込んで信頼関係を築くこと自体は、優れた営業の条件です。
でもその信頼関係は、投資話を持ちかけたりお金を借りたりする「悪用」の対象にもなり得ます。
今回の不祥事は、この信頼関係の悪用が積み重なった結果だと考えられます。
実際のトップ営業マンは何を考えて顧客と接しているのか
不祥事とは別に、保険業界のトップ営業マンが自らの営業手法を公開しているYouTube動画がいくつもあります。
実際に見てみると、驚くほど緻密に設計されています。
①質問を重ねて顧客自身に「必要だ」と言わせる
「保険不要派」を相手にロールプレイングをする研修動画があります。
この中で使われているのが、「関係構築→現状確認→問題の顕在化→影響範囲の確認→クロージング」という質問の型です。
いきなり商品を勧めるのではなく、「今の暮らしで困ることはありますか?」「もし◯◯が起きたらどうなりますか?」と質問を重ね、顧客自身の口から不安や必要性を語らせる。
これは営業理論で「SPIN話法」と呼ばれる手法です。
②断り文句をそのまま質問で返す
「独身だから保険はいらない」と断る想定客に対し、TOT(Top of the Table、生命保険業界で上位0.5%クラスに与えられる称号)クラスの営業マンが即座にこう切り返す、という研修動画もあります。
「何に困るんですか?」
断り文句をそのまま聞き返すことで、顧客に「本当に困らないのか」を自分の言葉で説明させる。
答えに詰まった瞬間が、営業のチャンスになります。
③契約後は紹介の連鎖で新規開拓しない
トップ営業マンを取材した動画では、「紹介が止まらない営業マンの秘密」として、契約した顧客から次々と友人・知人を紹介してもらう仕組みが語られています。
一度信頼を得た顧客の人間関係そのものが、次の見込み客リストになるということです。
④「貯金は三角、保険は四角」というもう1つの説得の型
漫画『インベスターZ』にも、保険会社の説得ロジックを扱った回があります(139話「貯金は三角、保険は四角」は嘘!?保険の矛盾を天才中学生が指摘。)。
保険会社は昔から「貯金は三角形(時間とともに右肩上がりに増える)、保険は四角形(常に一定の保障額が続く)」という図を使って、保険の必要性を説明してきました。
「貯金だけでは万一のとき備えが足りない期間があるから、保険で四角く備えましょう」という理屈です。
作中の天才中学生キャラは、この図に矛盾を突きつけます。
本来、必要な保障額は子供の成長や資産形成とともに減っていくはずなのに、保険料や保障額がずっと一定(四角)のままなのはおかしい、という指摘です。
つまり、「貯金は三角、保険は四角」という分かりやすい図解そのものが、顧客を納得させるために使われる説得の道具だったということです。
SPIN話法・応酬話法・紹介営業が「対人での説得技術」だとすれば、この「三角・四角」の図は「商品ロジックそのものに仕込まれた説得装置」です。
トップ営業マンの話法だけでなく、保険という商品の説明の仕方そのものにもこうした納得させるための工夫が随所に散りばめられているということです。
正直に言います。
これらの技術は詐欺でも何でもありません。
顧客の本音を引き出し、納得して契約してもらうための練習に練習を重ねたプロの技術です。
営業という仕事において、こうしたスキルは本来とても価値のあるものです。
でも、ここで立ち止まって考えてほしい
売る技術そのものは尊敬に値します。
問題はその先です。
本当に良い商品は、そもそも「断られた客を口説き落とす練習」をする必要がありません。
フェラーリやポルシェは、「車なんて別にいらない」と思っている人を説得するロールプレイングをしません。
ルイ・ヴィトンやエルメスも、「バッグなんて何でもいい」という客に断り文句を切り返す話法を用意していません。
ロレックスやオーデマ・ピゲも同じです。
本当に価値のある商品は、欲しい人が自分から買いに来ます。
だとすれば、なぜ生命保険は違うのでしょうか。
「保険はいらない」とはっきり言っている人にまで、わざわざ質問を重ねて必要性を語らせ、断り文句を想定した応酬話法まで用意して売り込む必要があるのでしょうか。
答えはシンプルです。
売れば売るほど、売った本人が儲かるからです。
歩合給という仕組みがある以上、営業マン個人にとっては「顧客に本当に必要かどうか」より「契約が取れるかどうか」が優先されやすくなります。
これは営業マン個人の人間性の問題というより、構造がそうさせているという話です。

公的保障・新NISA・iDeCo・掛け捨て保険で正直足りる
このブログでは何度も書いてきましたが、改めて整理します。
- 病気・ケガ・死亡といったリスクへの備えは、健康保険・遺族年金といった公的保障でかなりの部分がカバーされる
- それでも足りない部分は、掛け捨ての保険で必要最低限を安く確保すれば十分
- 資産を増やす・将来のお金を作るという目的なら、新NISA・iDeCoでのインデックス投資のほうが、貯蓄型保険よりずっと効率がいい
貯蓄型保険や高額な特約は、「保障」と「資産形成」という本来別々の機能を1つの商品に無理やり詰め込んだものです。
その分手数料も高く、営業マンへの歩合給の原資にもなっています。
トップ営業マンが練習を重ねてまで売りたがる商品ほど、実は売り手にとって旨みが大きい商品だ、と考えたほうが自然です。
まとめ
✅ 2026年、プルデンシャル生命(被害総額約39億円、被害申告累計約1,200人)、ソニー生命(元社員が約1.2億円取得)と、大手保険会社の不祥事が相次いだ。
✅ 一社専属・高額歩合給という構造が、顧客との信頼関係を悪用させるリスクを生んでいる。
✅ トップ営業マンの技術(SPIN話法・応酬話法・紹介営業・商品ロジックに仕込まれた説得装置)は本物のプロフェッショナルスキルであり、否定するものではない。
✅ ただし、本当に良い商品(フェラーリ・エルメス・ロレックス等)は、断る客を口説き落とす練習を必要としない。
✅ 保険不要派にまで売り込む理由は、売れば売るほど売り手が儲かる歩合制という構造にある。
✅ 公的保障+掛け捨て保険+新NISA・iDeCoで、多くの人にとって十分足りる。
営業マン個人を責める話ではありません。
その技術があなたにとって本当に必要な商品に使われているかどうかを、一度立ち止まって考えてみてください。
参考文献・出典
共同通信「顧客から新たな詐取7億9千万円 プルデンシャル、調査継続」(Yahoo!ニュース)
https://news.yahoo.co.jp/articles/e0498565a2ff5f5dfec7a0b0904d88a5a15b0113
日本経済新聞「ソニー生命、不適切な金銭取得の申し出30件 全契約調査へ」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB247DW0U6A420C2000000/
朝日新聞「ソニー生命、金銭詐取また判明 顧客の保険を解約させ遊興費などに」(Yahoo!ニュース)
https://news.yahoo.co.jp/articles/a803508454847b14df0fe3dfb0074b32320f141e
『インベスターZ』139話 解説動画「「貯金は三角、保険は四角」は嘘!?保険の矛盾を天才中学生が指摘。」(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=eethzayJYy0
※不祥事の詳細な被害金額・件数は各社の調査進捗により今後変動する可能性があります。
執筆時点(2026年8月)の報道内容に基づいています。
※特定の営業パーソンを誹謗する意図はなく、公開されている営業研修・取材動画の内容をもとに、一般的な営業手法として紹介しています。



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