9月下旬、ある動画の一部がSNSで広まりました。
ミュージシャンのGACKTさんが、NISAをやっている人に向けて厳しい言葉を投げかけている動画です。
YouTubeで見た人も、ショート動画やSNSで流れてきて目にした人も多いと思います。
「NISAをやっている自分は、考えが足りないのだろうか」
不安になった人に、先に結論をお伝えします。
NISAをやめる必要はありません。
ただし、1つだけ確認してほしいことがあります。
この記事はGACKTさんを叩くための記事ではありません。
発言のうち事実と合っていない部分だけを金融庁の情報で確かめる記事です。
間違っている部分は間違っていると書きます。
そのうえで、これからNISAを始めようとしている人、すでに始めている人に「心配しなくていいですよ」と伝えたい。
そのための注意喚起です。
動画では何が語られたのか
もとになったのは、YouTubeチャンネル「DROPOUT ドロップアウトした冒険者たち」が2026年1月16日に公開した、約18分のインタビュー動画です。
GACKTさんの新刊に合わせた内容で、お金の話はその一部です。
NISAに関する発言は、大きく3つに分けられます。
① 勉強せずに始める人について
勉強せずに「とりあえずNISA」という姿勢はおかしい。
NISAで利益が生まれる仕組みを説明できないまま預けている人は思考が止まっている。
② NISAの中身について
NISAには株がパッケージで入っている。
その株が暴落すれば損失が出る。
NISAで何%の配当がつくのか。
③ 投資のリスクについて
リスクのない投資はない。
自分は分散して投資している。
①の場面では、説明できない人に向けて「バカ」という言葉も使われました。
9月下旬に広まり、指摘が相次ぎました
動画の公開は1月ですが、話題になったのは9月下旬です。
発言の一部がXなどで広まりました。
集英社オンラインは9月28日の記事で、NISAは投資商品ではないという指摘がSNS上で相次いだと伝えています。
その一方で、同じ記事は用語の使い方は不正確でも警告の本質には耳を傾ける価値があるとも結んでいます。
正しい部分もあります
私も警告そのものには賛成です。
「みんながやっているから」「国がすすめているから」という理由だけで、中身を知らずにお金を入れるのは危険です。
これは、このブログで何度も書いてきたことです。
以前の記事(「中身、確認しましたか?投資信託の目論見書で見るべき5つのポイント」)でも、中身を確認しないまま持ち続けるのが一番危ないと書きました。
リスクのない投資はないこと、分散して持つことについてもその通りです。
NISAの説明は金融庁の定義と合っていません
問題は②の場面です。
動画では、NISAが「株の詰め合わせ商品」のように語られています。
「NISAに含まれている株」「NISAで何%の配当がつくのか」という言い方です。
金融庁の説明はこれとは違います。
- NISAは「少額投資非課税制度」である
- 通常、株や投資信託の利益や配当には約20%の税金がかかる
- NISA口座で投資した金融商品から得られる利益は非課税になる
つまり、NISAは税金がかからない「口座」の名前です。
商品の名前ではありません。
| NISA | 投資信託・株など | |
|---|---|---|
| 正体 | 税金がかからない口座(制度) | お金を増やす商品 |
| 利益を生むか | 生まない | 生む(損をすることもある) |
| 配当や値動き | NISAそのものには無い | 商品ごとに決まる |
| 選ぶのは誰か | 国が用意した制度 | 自分で選ぶ |
弁当箱にたとえると、NISAは弁当箱です。
おいしいかどうかは中に何を詰めるかで決まります。
「この弁当箱はおいしいのか」と聞かれても答えようがありません。

「年2〜8%」という数字について
動画の中では、聞き手から「年2〜8%」という数字も出てきます。
金融庁の資料に、これと同じ幅の数字があります。
ただしこれは「NISAの利回り」ではありません。
国内外の株式と債券に、毎月同じ額を20年間積み立てて持ち続けた場合の過去の実績を計算した結果です。
何をどう買ってどれだけ持ったかで決まる数字です。
NISA口座を開けば自動的にもらえる利回りではありません。
影響力のある人の発言がなぜ問題になるのか
私の考えをはっきり書きます。
「思考停止で始めるな」という趣旨には賛成です。
しかし、NISAを「商品」と取り違えた前提でやっている人を「バカ」と断じる言い方は、これから始める人を遠ざけてしまいます。
理由は2つあります。
理由① 説明する側の前提がずれている
動画は「仕組みを説明できないならやるべきではない」という高い基準を示しています。
ところが、その説明の土台であるNISAの理解が金融庁の定義と合っていません。
基準を示す側の説明がずれていると、聞いた人は間違った方向に勉強してしまいます。
「NISAの配当率」を探しても答えは出てきません。
理由② 強い言葉は切り取られて広まる
今回広まったのは、18分の動画のうちの一部です。
切り抜かれた短い動画では数十秒しか流れません。
もとの動画を最後まで見た人でも、強い言葉のほうが記憶に残ります。
「分散が大事」「リスクのない投資はない」という大切な部分は印象が薄れて、「NISAをやっている人はバカ」という印象だけが残ります。
始めようか迷っていた人がその印象だけを受け取ってやめてしまう。
私が一番心配しているのはそこです。
有名な人の発言をどう受け止めるか
今回のような発言に出会ったとき、どう受け止めればいいのか。
私の考えを書きます。
なお、私がお金の勉強でお世話になっている両学長(リベラルアーツ大学)も、9月29日のライブでこの件を取り上げていました。
私の考えは両学長の話と同じ方向です。
① 有名であることと、お金の知識が正確であることは、別の話
どれだけ有名な人でも、お金の知識まで正確とは限りません。
芸能やスポーツ、ビジネスなど、別の分野で成功した人が投資の制度にも詳しいとは限らないのです。
だからこそ、誰の発言であってもお金の話は1つずつ確かめる必要があります。
鵜呑みにすれば自分の資産を減らすことにつながります。
② 「制度」と「商品」を混ぜた話には注意する
NISAは非課税で運用できる「入れ物」であって、投資する対象そのものではありません。
この2つを混ぜて話している発信は、どこかで理解がずれている合図です。
見分けるための分かりやすい目印になります。
③ 最後に決めるのは自分
誰かの言う通りにして損をしても、その人は責任を取ってくれません。
だからこそ、なぜそうするのかを自分の言葉で言える状態にしておく。
これはGACKTさんの警告の正しい部分とも重なります。
そして、これはこのブログにも当てはまります。
私の書いたことも鵜呑みにしないでください。
毎回記事の最後に出典を載せているのは、ご自身で確かめられるようにするためです。
現場の読者へ ー 不安になったときの3ステップ

動画を見て不安になった人は、次の順番で確認してください。
ステップ① NISAは「口座」だと知る
NISA口座を開いただけではお金は増えも減りもしません。
中に何を買ったかがすべてです。
ステップ② 自分が何を買っているかを確認する
証券会社のアプリやWebサイトを開いて、持っている商品の名前を見てください。
「NISAをやっています」ではなく「NISA口座で、〇〇という投資信託を買っています」と言える状態が出発点です。
ステップ③ その商品の中身を確認する
商品名が分かったら目論見書で5つの項目を確認します。
何に投資しているか、手数料はいくらか、分配金の方針はどうか。
確認の方法は「中身、確認しましたか?投資信託の目論見書で見るべき5つのポイント」で詳しく書きました。
ここまでできれば「思考が止まっている」と言われる筋合いはありません。
現場でこの話題が出たら
休憩中に「NISAをやっているやつはバカらしいぞ」という話が出るかもしれません。
そのときはこう答えてください。
「NISAは口座の名前で、中に何を入れるかは自分で決めるものだよ」
これだけで十分です。
中身、確認しましたか?投資信託の目論見書で見るべき5つのポイント。
まとめ
✅ 話題になったのは2026年1月に公開された動画。
9月下旬に一部がSNSで広まった。
✅ 「勉強せずに中身を知らないままお金を入れるな」という趣旨は正しい。
このブログの主張とも同じ。
✅ NISAは「株の詰め合わせ商品」ではない。
金融庁の定義では、利益が非課税になる制度(口座)である。
✅ 配当や値動きはNISAではなく、中で買った商品ごとに決まる。
✅ NISAを商品と取り違えた前提でやっている人を強い言葉で断じると、
これから始める人を遠ざけてしまう。
✅ 有名であることとお金の知識が正確であることは別。
制度と商品を混ぜて話す発信には注意する。
✅ 不安になったら①NISAは口座だと知る ②何を買っているか確認する ③その中身を確認する。
誰かの強い言葉で始めることをあきらめないでください。
確かめる相手は、有名人でもこのブログでもなく、一次情報です。
参考文献・出典
DROPOUT ドロップアウトした冒険者たち「【GACKTの稼ぎ方】無思考にNISAだけやってるヤツは◯カなのか?【金はどうやったら稼げるのか】」(2026年1月16日公開)
https://www.youtube.com/watch?v=xBiKayYiIpM
集英社オンライン「「NISAは投資商品じゃないぞ」「全く理解してない…」GACKTの“勘違い”にSNSから総ツッコミ…だけど言っていることは正しいと言えるワケ」(2026年9月28日)
https://shueisha.online/articles/-/258743
金融庁「新しいNISA」
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/nisa2024/index.html
金融庁「長期・積立・分散投資とNISA制度」
https://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20170614-2/86_1.pdf
※記載の内容は、執筆時点(2026年10月)の情報です。
※本記事は、特定の個人を批判する目的のものではありません。
公開されている動画での発言のうち、制度の説明に関わる部分を
公的機関の情報と照らして確認したものです。
※本記事は特定の金融商品の購入を勧誘するものではありません。
投資はご自身の判断と責任において行ってください。


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